ダイヤモンド買取を検証してみる
あるときに客の動きを記したトラックシートが、露骨に浅いループを示しはじめた。店に入ってきた客は、バーゲン台に寄ったあと、一つか二つのディスプレイを見るだけで、入口からあまり遠くまで行かずにレジへと向かう。
これは偶然のことではなかった。
当然である。
客はバーゲン台から本を選ぶと、レジに直行して、バーゲン品の代金を払って立ち去ってしまう。
たとえベストセラーでも定価で販売される本の棚には目もくれない。
買い物客のインタビューからは不幸な副作用も明らかになった。
バーゲン台が目立ったおかげで、最新刊を買いにいく店というよりも安売り店という評判がたってしまったのだ。
情報を見出すための方法は、市場調査に興味をもつ世界各国で利用されているもので、世論調査を行なう、あるいは単に(電話または対面で)人びとに質問することである。
彼らが何を見たか、したか、あるいはしようと考えたかを聞くのだ。
それから長い質問リストのあとで、基本的なデモグラフィック特性(年齢、学歴、所得、性別、人種など)を調べる。
この二つから、仮説を集めた分厚いバインダーができあがる。
40歳、白人、大学卒、既婚、女性、子供2人、北東部の郊外に住み、車はステーションワゴンの客は、ピーナッツ・バターのジブがもう少し低脂肪だったらいいのにと思っている。
あるいは、コンビニエンスストアでコカコーラを買う男たちは、このブランドの色が赤でなかったら、これほど気を引かれないだろうと述べている。
あるいは、大卒者の4分の1が、週に一度はパスタを食べる、などだ。
相互参照の可能性は無限である。
こうした調査から学ぶべきマーケティングの知恵は多い。
しかし、それらは、買い物客や品物が最終的に一つ屋根の下に集うとき、店のなかで何が起きるかについてはあまり明らかにしていない。
顧客に店内で何を見て、何をしたかをたずねる調査はある。
しかし、その回答の信懸性は性々にして疑わしいものだ。
人は店のなかで自分が見たものやしたことを仔細に覚えてはいない。
あとで思い出さなければ、と考えながら買い物しているわけではないからだ。
われわれが行なったフレグランスの調査では、何人かの買い物客がインタビューに答えて、あるブランドを買うことを真剣に考慮したと語ったが、それは店に置いていないブランドだった。
コンビニエンスストアでのタバコのマーチャンダイジングの研究では、買い物客はMの広告を見たことを思い出した。
店内のどこにもそんな広告などなかったのだが。
アメリカ国内の小売業者が新たに店を開くのは、もはや新しい市場をめざしてのことではない。
他の店の顧客を横どりしようとしているのだ。
競争の激化にともない、他の店と差をつける、あえて言えば、ショッピングの科学の必要は高まる。
ショッピングの科学の今日の隆盛には、ほかにも理由がある。
何世代か前には、消費者の耳をねらったコマーシャルは、高度に凝縮された信頼できるかたちで入ってきた。
テレビは3大ネットワーク、ラジオはAMだけ、大部数を誇る全国発売の雑誌がひと握り、それから町ごとに地方紙があって、町のすべての大人が読んでいた。
有名ブランドの商品はそうしたメディアを通じて宣伝され、メッセージは大声で、明快に、信頼できる伝わりかたをした。
現在、テレビのチャンネルは100にせまり、リモコンやビデオでコマーシャルをとばすことができる。
FMラジオが出現し、細分化された関心事に見合った膨大な数の雑誌が生まれ、際限なく膨張しつづけるウェブサイトを情報や娯楽を求めて訪れることができ、新聞の購読者は減るばかり。
こうした状況のすべてが、消費者にメッセージを届け、何かを買うよう説得することがこれまでになく難しくなったことを意味している。
それと同時に、われわれの目の前でブランドの影響力が崩れかけている。
ブランドに価値がないわけではないが、かつてほどの絶対的な力をもたなくなった。
ひと昔かふた昔前には、人生の早い時期にブランドを決めたら、最後までそのブランドへの忠誠が貫かれたものだった。
V好きならVを買う。
MびいきならMを吸う。
自分のひいき、たとえば飲料はCかPか、家電はMかSか、石鹸はCかIかを決めたなら、それを生涯守りとおす。
いまや考えようによっては、毎日が新たな決断であり、すべてが当然ではなくなっている。
つまり、ブランドや従来の広告はブランド意識と購買傾向を築き上げたが、こうした要素がつねに売上げに反映するわけではない。
マーケティングの標準シールは、かつてのような効果をあげているとはとても言えない。
多くの購買決定が店のフロアでなされ、あるいはそれに強く影響される。
買い物客はブランドへの忠誠や、何を買うべきかを広告に頼るよりも、店内での印象や情報に左右される。
その結果、メッセージを伝え、売上げを決める媒体はいまや店と通路になった。
建物と場所そのものが、巨大な3次元広告なのだ。
看板、棚の配置、ディスプレイ空間と備品のすべてが、買い物客に特定の品物を(何かを買うなら)買いやすく、あるいは買いにくくしている。
ショッピングの科学は、こうしたシールをいかに利用するかを語ろうと意図している。
買い物客に実際に読んでもらえる案内や掲示をどうデザインするか、メッセージの場所が適切かどうかをいかにして知るか。
買い物客が快適かつ容易に試着できる衣料品のディスプレイはどのようなものか。
店全体に客の手が届き、確実に手を伸ばしたくなるようにするにはどうすればよいのか。
長いリストができる、それも1冊の本が書けるほどに。
われわれの調査が証明したところによれば、買い物客は店にいる時間が長くなるほどたくさん買う。
客が店内に滞留する時間は、その場がいかに快適で楽しいかによる。
Wの研究が、都市の公園や広場を改善したように、ショッピングの科学はよりよいショッピング環境を創出する。
結果として、われわれはクライアントにも利益をもたらす消費者擁護運動をしているつもりだと言いたい。
ここでショッピングの科学を、科学者ではなく実践者、すなわち小売業者の視点から見るのも有益だろう。
彼らはわれわれの調査の構成要素の一つであるにちがいない。
つまり、買い物体験の提供者である。
と同時に、小売業者はわれわれの学んだことをすべて吸収し、見出された法則を応用することが期待される人びとでもある。われわれが研究するのは彼らの店なのだから、当然つぎのような疑問がでてくる。
小売業者はそんなに無知なのか、と。
そのとおり、たぶん、人が想像する以上に。
例をあげよう。
ショッピング環境にいまだ広大な未踏の地が残されている証拠だが、年商数十億ドルのチェーンの経営の重役できわめて知的かつ有能な人物が、つぎのような簡単な質問にさえ答えられないということがあった。あなたの店で、実際にものを買うのは店を訪れる人のうち何人くらいですか?自分が彼の立場ならわかるはずだと思うかもしれない。
だが、まあ間いてほしい。
彼は怠け者ではない。
自社のチェーンの何千という店舗の状況をかなりよく把握しているし、日々のことはもっとくわしい。
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